はなのうちあけ話 1

こんにちは。はなです。


布団から出るのが辛い季節です。


年末の長崎旅行の話を書く書くと予告しておきながら

またまたのらくらしていたemihana ですが、実はここのところ

のらくらながらも、いつもよりずい分バタバタしていたのは本当のことです。



去年の12月の終わりごろから、emihana 家では、ある事件が持ち上がりました。

それでいつもは「ヘタレおばさん西神奈川代表」のemihana も

さすがにヤキモキ、オロオロ、ジタバタと結構、色々あったのです。


今日はその辺りのことを、こっそりうちあけちゃいます。



ことの起こりは、すぐ近所に暮らすemihanaパパからの一本の電話でした。

「話したいことがあるから、明日にでも来てほしい。emihana ママのことなんだけど」

ピンと来たそうです。これはおそらく、来る時が来たのではないか。

emihana は明日を待たず、すぐに歩いて2,3分の実家に出かけて行きました。


案の定、パパさんの話はママさんの変化について・・・

早い話が、痴呆が一気に進んだと、そういう事だったのです。


元々、娘にはなるべく負担を掛けたくはないと、日頃から口にしていた二人でした。

ママさんはもうすぐ89歳。3年ほど前から、物忘れがひどくなり

かかりつけのクリニックに週一度だけ見える神経内科の先生に

診ていただいていて

「まぁ、軽〜い認知症がありますが、お年から行ったら・・・ね」

そんなことで、軽〜いお薬を出していただいていたのでした。


ママさんの痴呆はとても緩やかに進んでいたようでしたが

それでも、最低限の家事はこなしていましたし、意思の疎通も問題ありませんでした。

「年から言えば、上出来だけど、昔がしっかりしてたから・・・」

ママさん頼りのパパさんは、そうこぼしたりしてましたが

それなりに、とにかく二人で何とかやって来られたのでした。


それがしばらく前に、たまたま薬が変わったせいなのか

そう言うステージに昇った(降りた?)せいなのか

ママさんの様子が明らかに変だ、手に負えなくなってきた、そう言うのです。



いったん、休憩。誰だって、年を取ります。



ママさんが一番おかしくなったのは、「幻視」を見るようになったこと。

実際にいるはずのない物や人を見てしまい、それによって妄想が

もくもく沸いてしまうのです。そしてもちろん、ひどく混乱するのです。


色んな人が入れ代わり立ち代わり訪れて来て、すごく慌ただしいみたいでしたね。

たいていは、亡くなった身内が多かったようでしたが

中には知らない人もいて、どうやら、その時一番嫌だったのは

「ナンバー2」とか言うおばあさんで、その人について話すうちに

妄想が妄想を呼んで、キャラクターが固まって行くのを

ちょっと面白がりながら話を聞いていたemihana って、どうなのよ〜

そう思った私です。

(後から、妄想を助長するから、聞いてあげても同調してはいけないと知って
 emihana は、あちゃ〜と、頭を抱えていました)


ママさんの妄想話は微に入り細に入り、とても具体的で

でも、もちろんすべて事実ではなく、荒唐無稽で、emihana もパパさんも

「違うでしょ〜、そうじゃないのよ〜」

と、何十遍と、同じ説明を繰り返しますが、「そんなわけないわよ!」

「また、そんなことを言って、騙そうとして!」

ママさんはとてもご機嫌が悪くなって行くばかりだったのです。

そして、その時の目付きがいつものママさんの目じゃなくって

少し悲しくなりました。


パパさんの話では、数日前から、誰かがいる、虫が見える・・・

そんなことを言い始め、困ったな、と思っていたそうなのですが

emihana に話しても、心配をかけるだけだから・・・

そう思い、内緒にしていたと言うことで、盛んに「巻きこんじゃってすまない」

「迷惑はかけたくなかったんだけど」と言うパパさんに、さすがのemihana も

「そんなことは気にしないでいいから、本当に、にっちもさっちも

 行かなくなってから相談されたら、もっと困るんだから」

そう答えていました。


パパさんがその時一番、参っていたのはパパさんをパパさんのお母さん

つまりemihana のおばあちゃんと混同してしまっていることで

パパさんに向かって「お母さん、Eさん(パパさんの名前)は、まだ帰らないんですか?」

なんて、聞いたりして「Eは俺だろ?ここにいるだろ?」と言い聞かせても

「嘘ですよ!そんなことありません!」と聞き入れてくれず

emihana と二人になると今度は「おばあちゃんも、ああ見えて

 けっこう意地悪な所があるから、Eさんどこ?って聞いたって

 Eは俺だろ!なんて、すごい剣幕で言うのよ」そう告げ口をするのでした。

おばあちゃんとは仲良しだったのに・・・とemihana も、複雑そうでした。


そして終いには「パパとemihana とお医者さんと三人で結託してる」

そんな疑心暗鬼がひどくなっていくばかりで、パパさんは途方に暮れていましたよ。

ついつい感情的に反論してしまうパパさんに

「今は、ママもたぶんすごく混乱してるはずだから、こっちが感情的になっちゃ

 上手く行かないと思う。パパの気持ちはわかるけど、今は、冷静になろう」

そう話すのを聞いて、その通りだな、と思いました。


私だって、いつだって元気で朗らかなママさんだったのに

そう思って、寂しかったし、ママさんのこともパパさんのことも

両方とも、辛いだろうな・・・とても気の毒になって

emihana に向かって、今までうんと楽させてもらったんだし

ここは踏ん張りどころよ〜!と、ガンバレ玉をびゅんびゅん投げてやりました。


パパさんが言うには、しばらく前、すでにある病名をお医者さんから

告げられていたそうですが、そのことも内緒にしていたらしいのです。

「これなんだけど・・・」emihana に見せたメモには

「レピー小体型認知症」そう書いてありました。

「あ・・・ためしてガッテンで見たのかも」emihana がさっそく調べてみると

ママさんの症状とぴったり。もう素人でも診断できるくらい。


第二の認知症と言われるこの病気の特徴は

・幻視を見る。
・薬の副作用がとても出やすい。
・筋肉のこわばりが出る。(パーキンソン病に近い症状)

その他にも、アルツハイマーに比べて進行が早い場合が多く

運動障害が出るために、転びやすく、寝たきりになりやすいとか

薬の副作用が強く出るので、塩梅がとても難しいとか

幻視が出て介護者と意思の疎通が図り辛いとか

介護者への負担も経済的負担もアルツハイマーの倍以上だとか

気が滅入るようなことばかりが書いてあって、emihana は心底がっかりしたそうです。

「あ〜、こんなネガティブなことばっかり見ててもしょうがない。

 ざっと目を通したから、今は見ない!」パソコンをパタッと閉じたのを見て

正解!と私も肩に乗って、声を上げたのです。



とにかく、ママさんの精神状態はかなり危うい様子でしたし

24時間一緒にいるパパさんもホトホト困り果てていました。

emihana は「今週木曜が診察日なんだから、お医者さんに行って相談しましょ。

 それまでは、何かあったらいつでも飛んでくるから、すぐに連絡して」

パパさんを叱咤激励しつつ、どんどん妄想話を話して繰り出しては

ヒートアップして行くばかりのママさんには

「だって、おばあちゃんはお墓の中にいるでしょ?先月お寺さんに行ったじゃない。
 
 一緒に車に乗って、ね?だから、ここにはいないじゃない。ここにいるのは

 パパでしょ?ね?これはEさんよ・・・」

「お寺には行った。でも・・・え?・・・そんなはずない!」

何度もママさんに事実を言い聞かせ、納得してもらおうとしていましたが


「あ〜、これは旅行・・・無理かな・・?いや、行ける?」

そんなことを考えているので、焦っているように見えて

案外、呑気なのかな?そうも思ったりした私でした。



その後、何とか木曜まで乗り切って、初めて病院に同行したemihana が

先生に状態を報告すると

「この病気は治りません。進行して行く病気です」

静かに宣言されました。

そして「ご家族だけでは無理です。介護保険の認定を受けられた方が

 良いと思います」そう勧めていただくと、emihana は間髪入れず

「はい、そうします!私が申請します!」元気良く即答していました。


幻視による混乱を防ぐため、一部元に戻したり、新たに加えたりした

薬を受け取り、家に戻って来ましたが、ママさんは相変わらず

幻視&妄想絶好調で、パパさんの浮気疑惑まで発覚しちゃって、私もびっくり。

パパさんの名誉のために言っておきますが、もちろん事実無根ですし

この病気ではしばしば現れる妄想なんだそうですよ、念のため。



「この年末に来て、明日は私の人間ドックだし明後日からは旅行だし・・・

 とにかく、ママの精神状態が安定しないことには、パパまで倒れかねないし」

ぶつぶつ言いながらも、旅行中止を口にしないemihana は

やっぱり中々どうして、図太いおばさんなのでした。


そんなこんなで、何やら風雲急を告げる年末のemihana家でした。

この後、emihanaとお父さんがどうにか予定通り、長崎に向かって

飛び立つことになったのはご存知の通りですが、その陰で

一波乱あったと言う話は、またこの次に書くそうです。


いつもいつも、引っ張ってばかりで、ごめんなさい。



私とも仲良しママさん