emihana 上海に立つ その5

こんにちは。 emihana です。



それまでようやく持っていた空模様、3日目にはとうとう

本格的に降り出してしまいました。



「それでは本日は蘇州に参ります」

Y氏のテンションは特に変わらず、emihana一行を乗せた車は

激しい水しぶきを上げながら、高速を文字通りなかなかの高速で

蘇州へと向かったのでした。


蘇州と言えば、「蘇州夜曲」と言う古い歌で日本でもお馴染みですが

古くは三国時代、呉の国の都が置かれた場所でもあって

水運で栄え「呉越同舟」とか「臥薪嘗胆」とか

難しい四文字熟語の発祥の地としても名を馳せ・・・

ええ、何だかんだあって、「東洋のベニス」と呼ばれている

風光明媚な都市だと、ウィキペディアも言っております。



走るほどに強まる雨足、それでも車窓の向こうに目を凝らせば

「え?・・・大都会じゃないの!」


何となく雨に煙る古い水郷の街をイメージしていたemihana の目に

飛び込んで来たのは近代的な高層建築の群れ。

しかもとても洗練された街並みではありませんか。


聞けば、上海から車で1時間の好立地、昔から有名な景勝地でもあり

近年、計画的に開発され、上海のベッドタウンとしても

大いに発展を遂げており、湖畔に立つ高級住宅は

100万元(1円≒190元)以上するのだとか!


そんな説明を受けながら新しい市街地を抜けて行くと

やがていつしか大変な大渋滞。観光バスもひしめきあい

どうやら観光地に近付いた模様です。


適当な場所で車を降り、歩くこと数分。


ものすごい人の群れ。

「ここが拙政園のチケット売り場です」

と言われてはみても、売り場の窓口がどこなのかわからないほどの

観光客が立錐の余地なく並んでいるではありませんか。

ほとんどの人が傘を差し、口々に大声で何かを喚き

ダフ屋も負けじと大声で話し掛け・・・喧噪が幾重にも重なって


・・・ああ、それでも何だか楽しそう。



けれども、日本人は入り込めない。無理。戦意喪失。



「ちょっとここで待っていてください」

Y氏は言い置くと、どこかへ去って行きました。



この足元、まるで現場検証中の鑑識。用意はいいけど。




呆然として歩道に佇むお父さんとemihana 。

その背後から奇妙な甲高い声が聞こえます。

ふと、振り返ると・・・



「拉猫叫」(引っ張ると鳴く猫)



蘇州の伝統的な民芸品のようなですが・・・

店主らしきおっさんが猫のおもちゃのひもを引っ張ると

いかにも盛りの付いた猫のような音がしますよ。

「へぇ・・・3個10元だって」

「ほしい?」

「・・・買う?」


大雨の中、こうしておっさんの店の前に佇んだのも何かの縁です。

吹っ掛けられてるのは百も承知。でも、値切ることもなく購入。

だって、もう、値切るとか、ほんと面倒くさくって・・・



はるばる日本まで運ばれた3匹の猫。



さっそくひもを爪できゅうっと擦ると、確かに聞くに堪えない

いやな音がしますが猫の鳴き声には程遠い。

何度かやって、すぐに飽きました。

「おっさんのやり方が上手かっただけじゃん」

「ま、そんなもんでしょ」

「それもそうだ」



反対側へと目を転じれば、そこには


真珠の粉を売っています。



真珠の粉は美肌に効果があるとかで、高級な化粧品にも

入っていたりします。

その粉をビニール袋に入れて売っている真珠屋さん。

これだけ人がいても、冷やかす人がちらほらいるだけ。

さて、どれくらい売れるんでしょうね。



などと時間をつぶすことしばし、いつしかY氏が

一人の女性を伴って、戻って来ました。

「ガイドさんです」


このガイドさんはフリーランス

一人100元プラスして払うと、入場券を売ってくれ

中に入ってガイドをしてくれるのだと言います。

ちゃんと抜け道があるんですね。


小籠包屋さんの「金次第サービス方式」がここでも採用されていた

と言うわけです。

もうワンランク下はダフ屋さん。でも、彼らから買うと

ほかの場所の入場券も抱き合わせで買わされるのだとか。


色々と上手いことできていますね。感心します、ある意味。



雨の中、並ぶ人たちの横を堂々とすり抜けて、入り口を通る一行。



世界遺産「拙政園」は中国四大庭園のうちのトップと評され

蘇州で絶対に外せない定番の観光地なのだとか。

造園芸術の傑作とも謳われていて、蘇州最大の庭園としても名高いそうです。


「規模の大きな江南庭園で、内部には白黒の落ち着いた配色の

中国式建築やあずまや、回廊などと、蓮の咲き乱れる池とのバランスが

非常に美しく、池にそって散策するととても気分が鎮まります」

と、ガイドブックには書いてありますが・・・


鎮まるか? ここで?


連休じゃなく、大雨じゃなく、とにかく人が100分の1くらいだったなら

きっと、そうでしょうね。

厭味の一言も吐きたくなるような、人・人・人、そして傘・傘・傘。

大声・大声・大声・・・




それでは、閑散として春雨に煙る庭園を頭に浮かべて

どうぞご堪能ください。





















ガイドさんは各スポットで、何とか場所をキープしては

とても丁寧に説明し、写真を撮らせてくださいました。

ここでも、真剣に頷き「ほほう」「ふむふむ」

頑張って相槌を打ったemihana でしたが、周囲の喧騒のせいか

残念ながら断片的にしか記憶が留まっておらず・・・


・各季節ごとに違った花が見られるようにあずま屋が設計されている。

・借景で離れた場所に立つ塔が見えるポイントがある。

・歌劇を見るための建物は主人の部屋と夫人の部屋とに仕切られていて

 夫人の部屋からは音しか聞こえないし、景色もよく見えない。


大変、言いにくいのですが、これくらいしか覚えていません。

面目ない。



・・・あ、これこれ

龍の形を模した建物。右側の廊下の部分が髭、左側に伸びているのが尾。



それから、この硝子は当時のオランダ(ポルトガル?)から輸入したもの。



そして、ここでも池に泳いでいるのはオシドリなのでした。



かえすがえすも惜しいです。

とにかく雨足が強すぎ、そして人が多すぎ。

傘を避け、人を交わしながら歩いて行くだけで神経を使って

相当消耗したところで、ようやく外に。


やがて迎えの車がやって来て、すごすごと乗り込むと

食事を摂るため日本食レストランへと向かったのでした。


なぜか日本食屋さんが軒を連ねる通りの一角の店に入り


Y氏は「ステーキ定食」、ドライバー氏は「うな重

お父さんは「カツカレー」emihanaは「天ぷら定食」をオーダー。

お味はまぁ、ここは蘇州だと言い聞かせつつ食すれば

それなりに納得できる「海外ならOK日本食」でございました。



食事を終えて再び車に戻った一行が次に目指したのは


かの有名な「寒山寺」



 
 月落烏啼霜満天、  
(月落ち 烏啼きて 霜天に満つ)

 江楓漁火対愁眠。  
(江楓漁火 愁眠に対す)

 姑蘇城外寒山寺、  
(姑蘇城外の寒山寺)

 夜半鐘聲到客船。  
(夜半の鐘声 客船に到る)


張継の七言絶句「楓橋夜泊」

この詩に詠み込まれたがために、広く後世にまで

その名を轟かせることになった「寒山寺」


元は6世紀初頭に建てられた臨済宗の古寺なのです。





由緒正しい歴史を持つ名刹でのあれこれは

次回で詳しく〜




え?・・・まだ続くの?